― その人らしさは、深いところにあるものだから ―
「いいな」と思ったことを真似するのは、誰でもやることだと思います。
ファッション、話し方、文章のトーン、言葉の選び方。
ちょっとした憧れや、うらやましい気持ちがきっかけで、人は誰かを参考にしたり、似せようとしたりするものです。
でも、表面だけをなぞっても、それだけじゃ同じにはなれない。
たとえば、「言葉」ひとつとっても、
その人がどんな経験をして、どんな思いでその言葉を選んでいるのか。
そこには積み重ねた時間や、向き合ってきた感情がある。
そういうものが“深み”になって、滲み出てくる。
だからこそ、ただ見える部分だけを真似しても、なにかが違ってしまう。
似ているようで、まるで違う。
それは、土台にある“思考”や“価値観”までをコピーできないからかもしれません。
どれだけ丁寧に形を真似しても、
それが「その人の中から自然に出てきたもの」でなければ、見ている人には伝わってしまうものです。
“似せてるだけ”と、“自然にそうなっている”の違い。
そこには、本人が意識していなくても、どこかに「らしさ」の差が出る。
そして、その“らしさ”こそが、一番真似できない部分だと思うんです。
真似できるのが表面だけなら、
本当に価値のある部分は、自分だけのもの。
誰にも奪われないし、誰とも比べる必要もない。
むしろ、自分自身が誰かの目に触れ、「いいな」と思われる存在であること。
それは、ちょっと誇ってもいいのかもしれません。
誰かを参考にすることは悪いことじゃない。
でも、自分の中にある本質まで育てないと、続かないんですよね。
どこかで苦しくなるし、自分じゃない何かをずっと演じているようで、疲れてしまう。
形だけでは、信頼も、心も、自然とは集まってこないから。
「真似できるのは表面だけ」
この言葉を自分に言い聞かせると、不思議と落ち着きます。
どれだけ外側を似せてきても、
こちらの積み重ねたもの、感じてきたもの、選んできたものは、真似できない。
その重みは、表面だけをなぞった人にはわからない。
だからこそ、焦らなくていいし、惑わされなくていい。
ちゃんと“見ている人”は、そこまで感じ取ってくれるから。
あなたにしか出せない雰囲気、言葉の選び方、空気感。
それは“つくろうとしてつくれるもの”じゃなくて、日々の中から自然とにじみ出るもの。
だから大丈夫。
他の誰かがどれだけ似せてきても、
あなたの深いところまでは、届かない。
あなたはあなたらしく進んでください。
真似できるのは表面だけ——積み重ねてきたものは、目に見えないところにある

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